2008年外国人による日本語弁論大会 発表原稿
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誰も知らないケンタッキーの我が家 カバロ ニコラス クリストファー
アメリカ
 私はケンタッキー・フライドチキンが大好きです。
なぜなら、私は人生の大半をアメリカ合衆国の、ケンタッキー・フライドチキンが約700円で食べ放題のケンタッキー州で過ごしたからです。
しかし、大学のために近くの州へ移った際、人々が私の故郷についてケンタッキー・フライドチキン以外何も知らないことにとても驚きました。
世界的に有名なケンタッキー・ダービーや、世界最長の洞窟であるマンモスケーブ、また日本の大手自動車メーカーであるトヨタの米国最大工場と本社が所在していることなど、ケンタッキー人にとっては自慢なことが、州を一歩出た途端「それは初耳だ!」と言う言葉に変わるのです。
恐らくケンタッキー・フライドチキンが全国展開をしていなければ、ケンタッキーと聞いてもイメージすら沸かなかったことでしょう。
ちなみに、私も人のことを言えた義理ではありません。
今年、私の友人が大学を卒業しコロラド州で就職することとなり彼の送別会に出席した際、彼と「コロラド州ってどんなところ?」という会話になり、私も彼も沈黙してしまいました。
そして、私の脳裏に一つの疑問が生まれました。
「なぜ大抵のアメリカ人は他の州について何も知らないのだろう?」と。
私はこれまで夏休みに他の州を旅行したりしました。
また、祖父母は東海岸の州に住んでいたりもしますが、自分の住む州以外の知識がないのです。

しかし、物事を忘れやすい私はその様な疑問などすっかり忘れ、9月から京都で留学生活を始めました。
そんなある日、東京から出張ついでに友達が訪問して来ました。
すると、彼はせっかく京都に来たので、京豆腐や京のお漬物、そしてデザートに蕨餅を食べに行こうとリクエストしたのです。
その瞬間、私は「なぜ彼は一度も京都に住んだことがないのにこれ程詳しいのだろう?」と思い、直接彼に質問してみると、「それぐらい日本人は誰でも知っているよ」という答えが返ってきました。
私にはその答えの意味を理解することができませんでした。
なぜ日本人は暮した事のない場所のことや、食べ物について知っているのでしょうか?その答えを見出すことは私には難しいのですが、一つ日本に来て感じていることがあります。
それは、日本は都道府県によって独自の文化を持っているということです。
また、そこに住む人々にも多くの共通点が見られます。

私は3年前に東京に一年半住んでいたことがあります。
一ヶ所にしか住んだことのない私は、そのことで東京イコール日本だと考えるようになりました。
しかし、今回京都に留学してみて、たった数時間東京から離れただけで、言葉や、食べ物、街並みや時間の流れ方が違うということを知りました。
アメリカにも地域によって英語のアクセントが異なりますが、日本は各県によって方言が存在します。
しかも、日本人は方言を話す地方の人でも標準語を話そうと思えば上手に話すことができるのです。
これは、私にとって衝撃でした。
伊丹空港に到着し、京都までの行き方を人に尋ねたところ、関西弁で説明されたため理解に苦しむ顔をすると、その人は標準語で再度説明してくれたのです。
はじめから、私が教科書で学んだ日本語で説明をしてくれたら良いのにとお礼を言いながら心の中でつぶやいてしまいました。

次に、食文化の面で考えてみると、日本人が旅行や出張へ行くと皆その土地の名物をお土産として買って帰ります。
アメリカには各州に特産物はありますが、京都でいう『八橋』の様なお菓子の名物はありません。しかし、日本には必ず各都道府県に名物のお菓子が存在し、しかも日本人の大半はそれを知っています。
『白い恋人』を渡されると、その人は北海道へ旅行に行ったのだと思うし、『ちんすこう』を渡されたら沖縄に行ったのだなと言う様にお菓子から都道府県を判別できるのです。
これも一つの文化だと私は思います。アメリカの空港にも、地名と町のシンボル写真が掲載されたチョコレートの箱が売ってありますが、箱の中身はどこの州に行ってもすべて同じ味のチョコレートなので、箱さえ捨ててしまえばどこのお土産なのかわかりません。

また、外的な面だけでなく、日本人は心理的な面でも各地についての知識を持っています。
日本人は人の血液型を聞くだけで、その人の性格を判別する様に、どうやら県によっても人々の性格がわかるらしいのです。
京都の人は上品で、大阪人は面白く、熊本の男は頑固者、沖縄の人は明るくのんびり屋などです。
これには歴史的背景や経済的関与、それに気候や地形など色々な要素が関わっていると思います。
また、昔の日本はご近所同士で家族のように助け合っていたことも影響されているのではないでしょうか。
しかし、いくらその地域に住んでいようが個性というものはあります。
私は日本人がその地域に住む人と会う以前から、先入観によってどんな人なのかを既に自分の中で少し決めている様に思えます。
私はケンタッキーにある日系企業でインターンシップをしたことがありますが、人事部から担当部署へ配属される時に「あなたの上司は関西の人だから、おもしろい人よ」と言われました。
しかし、彼はとてもシャイで笑いに貪欲の九州男児の様な人でした。
日本では人を型にはめる傾向があると思います。
血液型や県民性、出身大学などです。
しかし、人と接する前に人を判断すると自分から知らない間に見えない壁を作ってしまうこともあるのではないでしょうか。

この様に各都道府県に独自の文化や特色があることは素晴らしいことです。
その土地に愛着心を持つことは、町の活性化へと繋がります。
また、その風土で育まれた歴史が産物を生み出します。
そして、より地域が団結します。しかし、それと同時に、その地域に住む人々を一概に判断する先入観も生み出しているのだと思います。
同じ場所から来ても人は各々個性を持っているため、一人一人とじっくり付き合うことによってその性格を理解する努力が必要です。
その反面、私みたいに他の地域について何も知らないことも決して良いことではありません。
このことから、アメリカ人も日本人も互いに学び合えることが山ほどあるのだと思います。
私も自分の国のことをより深く理解できるように他の地域について既に調べ始めています。
帰国の途につく機内で他の州民の隣に座ることになったら、州名以外にその人が住んでいる地域について知っていることを伝え、そこから新たな交流をしたいです。


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